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今作『Not Enough 16plus』は、end of youthの最高傑作である。
まずはこう断言したい。
なぜなら、この作品には彼がこれまで歩んできた音楽的背景と、その時代を生き抜いた感覚がすべて注ぎ込まれているからだ。
end of youthの音楽の魅力を一言で表すなら「ブレンド力」だと思う。
彼は自分の中に積み重なった音楽的記憶をそのまま模倣するのではなく、end of youthというフィルターを通すことで、まるで新しい質感を帯びた作品に昇華させてしまう。
懐かしさと新鮮さが同居し、しかも違和感なく調和している。
その絶妙なバランス感覚こそが、彼の音楽の核である。
ではなぜ、僕はこの作品を最高傑作と断言できるのか。
それは僕自身がend of youthと同世代だからだ。
同じ時代を生き、同じカルチャーに触れ、同じ空気を吸ってきたからこそ、彼の音楽が描き出すディテールを自然と理解できる。
僕が夢中で聴いてきた音楽と、彼が掘り下げてきた音楽は驚くほど似ている。
だからこそ、このアルバムに漂う空気感が、単なる音楽以上の「共感」として胸に響くのだ。
今作には、end of youthが辿ってきた音楽的ルーツが非常に高いレベルで融合されている。
テクノやハウスの電子音楽、ヒップホップ黎明期の衝撃、ゲームやアニメ、テレビの中で無意識に刷り込まれた「音の断片」それらすべてが一つの作品の中で呼吸している。
おそらくこれは、彼のキャリアの到達点のひとつであり、同時に新たな出発点でもあるのだろう。
まず注目すべきは電子音楽との関わりだ。
僕たち世代にとって、ファミコンの登場は決定的だった。
電子的な「ピコピコ音」が音楽として耳に馴染み、抵抗なく受け入れられる環境で育ったのだ。
その後パソコンの普及とともにDTM環境が整い、手の届く範囲に電子音楽の制作ツールが溢れた。
そうした環境の変化は、彼の音楽的素養に直結している。
さらに思春期には、日本のヒップホップ黎明期をリアルタイムで体験した。
新しいビート、言葉遊び、サンプリングの革新性――それらは僕ら世代の感受性を大きく揺さぶった。
つまりend of youthとは、「踊れるビートに電子音とサンプリング」を重ね合わせることで生まれた、時代そのものが育んだアーティストなのである。
では、その「踊れるビート」とは何か。
end of youthの楽曲におけるビートは、単なるリズムの刻みではない。
むしろ旋律と同じくらい雄弁に物語を語る存在だ。
4つ打ちの規則性に突然差し込まれるシンコペーション、ハウス的なループにヒップホップ的なブレイクを重ねる構造――そこには「生きているリズム」がある。
一定のビートを刻みながらも、時に呼吸するように揺らぎ、跳ね、聴き手の身体を自然に動かしてしまう。
それはまるで演奏者とリスナーの間に交わされる「会話」のようだ。
そして、もうひとつ重要なのがサンプリングの存在である。
end of youthのサンプリングは単なる引用ではない。
古いレコードのフレーズからあらゆる音を切り取り、ビートの隙間に配置することで、新たな意味を持たせている。
そこには「掘る」ことへの情熱があり、一瞬の音を自分の世界観へ取り込む貪欲さがある。
だから彼の楽曲からは、サンプリングそのものへのリスペクトと愛情が強く伝わってくるのだ。
この「リズムとサンプリングの両輪」こそが、end of youthの音楽の核心だと僕は思う。
ゲームやクラブカルチャーから受け取った「ビートの快楽」と、ヒップホップから学んだ「断片の再構築」が、高次元で統合されている。
そしてその統合は決して机上の実験ではなく、彼自身の記憶と身体感覚から生まれている。
つまり今作は、彼にとって「ルーツの呼吸」であり、僕らにとっては「心の記憶」を呼び起こすアルバムなのだ。
さらに重要なのは、ここにある「踊れるビートに電子音とサンプリング」が、単なる模倣や追随ではないという点だ。
懐かしさを漂わせながらも、緻密なビートメイキングによって未来へと更新されている。
それは過去を消費するのではなく、過去を再編集し、次の世代に手渡す作業のようにも思える。
彼が今作で挑んでいるのは、まさに「自分たちの時代を音で再構築すること」なのだ。
そして『Not Enough 16plus』というタイトル。
「まだ足りない」「まだ16歳以上じゃない」とでも言うような、挑発的で未完成な響き。
同時に、それは彼の音楽のルーツでもある「少年期」を示唆しているようにも思える。
年齢やキャリアを重ねても、常に成熟を拒み、進化の途上であり続けたい――そんな決意表明にも聞こえるのだ。
つまり本作は「最高傑作」であると同時に、彼にとってはあくまで通過点に過ぎない。
だからこそ、この先さらに進化し続けるend of youthの音楽を、僕は心から楽しみにしている。
Silly BOY wrote an article on 2025/09/07
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